5本目のボトルが壁に加わった。
グラスを重ねても酔いはまだこない。
真冬らしい寒さのせいだろうか。
スッカリ客の引けた店内は、冷たい空気を取り戻しつつある。
男女が終電と宿泊の駆け引きをしているのを横目に、バーテンダーとグラスを交わした。
二言三言のバカバカしい話をしているうちに、カップルがドアをくぐっていった。
どちらのカードを引いたかは分からないが、ようやく決着がついたらしい。
客を見送ったバーテンダーがドアを閉じて視線を送ってきた。
「最近どうよ?」
この十数年、彼との間で繰り返されるこの言葉に大した意味はない。
それを察したのか、代わりにグラスの氷がカランと鳴いた。
夜はこれから。
話はまだ尽きない。
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