等身大の楽しみ

名の通ったシェフの店の数々に一時期よく行っていました。
行っていたというよりは連れて行かれていたというほうが正しいですけどね。
そこで感じたことなんですけど、ビックリするほど美味いわけじゃないんですよね。
雰囲気はかなり気持ちのいいものですし、料理も一般的なレベルを凌駕してはいます。
これは料理をする人間には分かるはずなんですけど、有名店の料理の美味しさって調理によって完成された味というのではないと思うんですよ。
最高の材料を使って調理するのだから、ある程度の味が引き出せて当然だと思うんです。
たしかに食材を手に入れるのに労力を費やしているのは理解しているつもりですが、それは料理人としての腕ではなくて経営者としての手腕のような気がするんです。
オレは近所のスーパーや小売店で買ってきた食材を、前述のようなお店の味のレベルまで引き上げて出すシェフを幾人も知っています。
それを考えると恐ろしく高い値段を出してその味や雰囲気を楽しむのがバカバカしくなってしまうんですよね。
きっと小金持ちの生活をしていたらそんな違和感とかはないかもしれないんですけど、オレはあまりにも金のかかっているもののよさとか分からないし、それを分かろうと背伸びをする気にもなりません。
そんなトコで背伸びなんかしなくてもいい。
背伸びするのは、背の高い彼氏や彼女と唇を合わせるときだけでいいんです。
結局のところ、オレには少し子汚い雰囲気の漂うバーでくだらない話に花を咲かせて、高くもない酒を酌み交わしながら、常連客の持ってきた食材をスタッフに調理してもらって大ハシャギというのがイチバン楽しいんだと思います。

何年か前の誕生日なんですけど、イタメシ屋でお祝いをしてもらったことがあります。
スタッフ総出で忙しい時間を割いて話しかけにきてくれたり、誕生祝の言葉を綴ったデザートプレートを出してくれたり。
同じ視点で悪戯やバカ話をしてくれるスタッフの応対にグッと来るものがありました。
オレにとって、アレは最高の誕生祝いだったと胸を張れます。
背伸びなんかしなくても、自分のペースでやってればこんなに嬉しいことがあるんだというのを実感させてくれました。
人とのつながり、気持ちのいい笑顔、そういうものがオレにとってはイチバン大事なんです。
それは金をかけるだけじゃ手に入らない、人としてのつながりをスタッフとも共有するには常にお客様であるだけじゃダメなんだってオレは知っています。
背伸びしたって何も見えません、等身大で向かい合ってこそ見えるものはあるんですから。

***

Q.最近の日記は週休2日なんですか?(フォームメールより)
A.えっと、驚くほどに気まぐれです。

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wheel of fortune

輪と樹

No.10。
金冠の獅子。
転機を示す輪。

silhouette

影絵

気怠い暖房。
暖かいお茶。
色のない夢を見る。

pine

皿の上の松

反芻する言葉。
キャロルの季節に。
大したことじゃないけど。

ノエルの靴

ノエルの靴

嬌声は遠く。
雑踏は遠く。
降誕祭の温度。

冬の華

華

暗い空にしがみつく星座。
片手には缶珈琲。
星の名前を思い出す。

I’ll sing the blues

蒼い灯

I’m free to be whatever I
Whatever I choose
And I’ll sing the blues if I want

Chant de Noel

紅色

ノエルの足音。
肌を刺す風の温度。
キャロルの聴こえ始める頃。

Tokyo Tower

Tokyo Tower

いつもと同じなら。
やり方は人それぞれ。
自分なりのそれを選べばいいだけ。

colors

夕暮れの灯

冬の匂いのする夕焼け。
色の変わる灯りを見上げる。
明日はきっと晴れる。

china blue

中華街の門

消えていく温度。
今はなき人たちの残り香。
今宵は良い歌を聴きたい。

wonder wall

壁画

壁に描かれる絵。
幼い頃のそれはスプレーで。
オトナになったそれは光の色で。

fountain

噴水

夕暮れ。
童謡の流れる時間。
お家に帰ろう。

キラキラヒカル

石の光る部屋

輝きの色と。
輝きの温度と。
キラキラヒカル。

恐竜の日

恐竜の日

何も変わらず。
胸の熱さはそのままに。
幼い日に見上げたのと同じ。

re:born

窓辺の華

嬌声と乾杯と。
遠回りの途中。
紡ぐのは記憶。